薬の中には、食前や食直前に飲むように決められているものがあります。なぜ、食後ではなく、食前や食直前に飲む必要があるのでしょうか?また、飲み忘れに気づいた場合、どうすればよいのでしょうか?今回は、その理由と飲み忘れてしまった場合の対応について説明したいと思います。
1.食前に内服する薬
☆そもそも、『食前』とは?
…食前とは、食事を始める約20~30分前を意味します。
☆食前に内服する理由は?飲み忘れた場合はどうすればいい?
〇食前に内服する理由
→薬の効能や吸収の観点から、食前に内服すると決められている場合が多い。
例)ナウゼリン錠
…ナウゼリン錠は胃腸の働きを整え、食後の吐き気を抑える薬です。また、食前に比べて食後に飲んだ場合に薬の吸収が遅くなることが知られています。したがって、ナウゼリン錠を食後に内服すると期待する効果が得られない可能性があり、食前に内服するように決められています。
〇飲み忘れた場合は?
→飲み忘れた場合は、症状が落ち着いているのであれば、飲み忘れた分は服用せず、次の服用時に決められた量を飲みましょう。絶対に、一度に2回分まとめて飲まないでください。
2.食直前に内服する薬
☆そもそも、『食直前』とは?
…食直前とは、食事を始めるすぐ前(5分以内)、もしくは、約5~10分前を意味します。
☆食直前に内服する理由は?飲み忘れた場合はどうすればいい?
〇食直前に内服する理由
→薬の効能や安全性の観点から、食直前に内服すると決められている場合が多い。
例)ベイスン錠(α-グルコシダーゼ阻害薬)
…食事でとった炭水化物をブドウ糖に分解する酵素を阻害し、小腸からのブドウ糖の吸収を遅らせて、食後の血糖値が急激に上昇するのを抑える薬です。したがって、腸にごはんやパンなどの食べ物が到達する直前に薬が腸に作用する必要があるため、食直前に服用する必要があります。
〇飲み忘れた場合は?
→食事の直前に飲み忘れた場合は、次の食事の直前に1回分を飲みましょう。絶対に、1度に2回分をまとめて飲まないでください。なお、食前や食後の内服では、食直前に内服した場合に比べて、十分な効果が得られないと考えられます。
例)グルファスト錠(速効型インスリン分泌促進薬)
…グルファスト錠は、内服後、速やかにインスリンの分泌を促進し、食後の血糖値が急激に上昇するのを抑える薬です。グルファスト錠は、内服後速やかに薬効を発現するため、食事を始める30分前に内服した場合では、食前15分には血中インスリン値が上昇し、食事を始める時点での血糖値が低下することが報告されており、食事開始前に低血糖を誘発する可能性があります。また、食後に内服した場合では、速やかな吸収が得られず効果が減弱することが知られています。したがって、効果的かつ安全に薬の効果を発揮するために、食直前(5分以内)に内服するように決められています。
〇飲み忘れた場合は?
→飲み忘れた場合は、食事を始めていたら、その回の服用は避けて次の食直前(5分以内)に 1 回分を飲みましょう。絶対に、2 回分を一度にまとめて飲まないでください。
いかがでしたか?薬ごとに決められた飲み方には、それぞれ理由があることが分かっていただけたでしょうか?必ず、医師の指示通りに内服するようにしましょう。また、薬ごとに飲み忘れた時の対処法も異なるので、万が一飲み忘れてしまった場合には、自己判断ではなく、薬剤師や医師に相談して適切に対応しましょう。