春から夏への季節の変わり目で、体調を崩しやすい時期となりました。皆さん、いかがお過ごしですか?
今回は、当薬局でもお問い合わせ頂くことの多い目薬の『点眼順序』について、少しお話したいと思います。
点眼剤を複数使用する場合、次の4つの項目を考慮して、点眼順序を決めると良いと言われています。
①点眼順序によって、お薬の効き目が変わる場合
同じ薬効の点眼剤でも、異なる作用機序を持つ場合などでは、点眼順序によってお薬の効き目が変わることがあります。眼科医より指示があった場合は、必ずそれに従うようにしてください。
例)ヒアレイン(ヒアルロン酸)点眼液とジクアス(ジクアホソルナトリウム)点眼液
⇒ジクアス点眼液を先に点眼し、5分以上経ってからヒアレイン点眼液を後に点眼
(ただし、ジクアス点眼液で刺激感がある場合には、ヒアレイン点眼液を点眼した後にジクアス点眼液を点眼。)
理由:ヒアルロン酸は、眼表面のムチンとの相互作用によって粘度が上昇するという報告があり、この粘膜付着性によって眼表面に長時間滞留し、涙液安定化作用を示すと考えられています。ジクアホソルナトリウムには、眼表面のムチンを増やす働きがあるため、ジクアホソルナトリウムとヒアルロン酸を併用する際には、ジクアホソルナトリウムを先に点眼し、5分以上経ってからヒアルロン酸を点眼したほうがよいと考えられています。
(ドライアイ診療ガイドライン(2019年、監修:ドライアイ研究会)より、一部改変)
②より効き目を期待したい点眼剤がある場合
点眼するお薬に期待する効果に優劣がある場合は、より効果が出てほしい点眼薬を一番最後に点眼しましょう。これは、先に点眼した目薬が十分に吸収される前に、次に点眼した目薬によって洗い流されてしまう恐れがあるからです。期待する効き目の優劣に関しては、眼科医の指示に従ってください。
③物性の異なる点眼剤を併用する場合
点眼剤の中には、様々な物性を持つ薬剤があります。
例) 水溶性点眼剤 …ヒアレイン点眼液、サンコバ点眼液
懸濁性点眼剤 …ネバナック懸濁性点眼液
その他、眼表面への滞留性を高めるよう工夫された点眼剤
ゲル化する点眼剤…チモプトールXE点眼液
アルギン酸(増粘剤)を添加…ミケランLA点眼液
特別な医師からの指示がない場合には、水溶性点眼剤→懸濁性点眼剤→滞留性を高めるよう工夫された点眼剤の順に点眼しましょう。これは、その順に眼表面からの吸収に時間がかかるためであり、後に点眼した目薬によって洗い流されるのを防ぐため、十分な点眼間隔をあけた上で、その順に点眼しましょう。
④点眼剤と眼軟膏を併用する場合
眼軟膏を点入(目の中につける)した場合、眼表面に油の膜ができるため、その後に点眼剤をつけても油が水をはじいてしまって、吸収されません。
点眼剤と眼軟膏を併用する場合には、必ず眼軟膏は一番最後に使用しましょう。